社会保険とは、病気やケガ、出産、老齢、死亡など予期せぬ事態に備え、保険料を出し合ってこれらの不安を解消するものです。社会保険には、その目的によっていくつかの制度がありますが、ここでは一定の要件の事業所が加入しなければならない全国健康保険協会(旧政府管掌健康保険)の「健康保険」と日本年金機構の「厚生年金保険」についてご説明いたします。(以下社会保険とは、全国健康保険協会の健康保険と日本年金機構の厚生年金保険のことを示します)
現在でも本来ならば社会保険に加入しなければならない事業所にもかかわらず、加入されていない事業所もあるようです。これらの事業所の中には、社会保険に対しての漠然としたイメージだけで判断されている事業主の方もかなりいらっしゃるようです。
しかし、制度の詳細をきちんとご理解いただけば、法律で決まっているから加入しなければならないということではなく、従業員にとってはもちろん事業主の方にとっても社会保険に加入するメリットはあるのです。
健康保険は政府管掌から協会けんぽへ
平成20年10月より政府管掌健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)へ変わりました。
このことにより、健康保険の各種申請等の窓口が原則として変わることになりました。
保険給付の内容は特に変わりません。
健康保険料率は都道府県別ごとに保険料率が決定されることとなっています。
社会保険に加入しなければならない事業所とは
社会保険に必ず加入しなければならない事業所は下記のような事業所です。
事業所 |
事業所規模(従業員数) |
個人事業所 |
常時5人以上 |
法人 |
人数にかかわらず |
※但し、個人事業所でも農林水産業等の第一次産業、接客娯楽業、法務業、宗教業については、従業員の人数にかかわらず加入しなくてもよいことになっています。
したがって、法人(有限会社、株式会社等)であれば、たとえ従業員が1人しかいない事業所、また従業員が1人もいなくても役員に給与が出ている場合には、加入することになります。
また、必ず加入しなくてもよい事業所(例えば従業員が1人だけの個人事業所)であっても加入を希望する場合には、従業員の同意があるなどの一定の要件を満たせば加入することができます。
社会保険が適用された事業所に雇用される従業員は原則として全員加入の対象となります。但し、臨時に使用される者で、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される者など一定の要件の臨時的な従業員は加入しなくてもよいことになっています。
また、常時雇用されている従業員でも、正社員より労働時間や労働日数が短い従業員は、次の要件に該当すると加入しなければなりません。
事業所に従事する通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数と比べて… |
所定労働時間が4分の3以上 |
及び |
所定労働日数が4分の3以上 |
このことから、下記のどちらか一方を満たすパート、アルバイト等については、社会保険に加入しなくてもよいということになります。
1. 1日の所定労働時間が正社員の4分の3未満であること |
2. 1ヶ月の出勤日数が正社員の4分の3未満であること |
※但し、実際にはこの条件を満たすか否か、年金事務所が総合的に判断することになります。
健康保険とは
健康保険(協会けんぽ)では、被保険者とその家族がお仕事以外のことで病気にかかったり、ケガをしたり、また出産したり死亡した場合に給付が受けられます。
原則として、市町村の国民健康保険よりも給付内容は幅広く手厚いものとなっています。
下記に健康保険の給付一覧をあげます。
病気、ケガをしたとき |
療養の給付 |
病院に保険証を提出して、診察や薬剤の支給等が受けられます。窓口での自己負担率は3割、70歳以上は原則1割 |
入院時食事療養費 |
入院中の食事の費用について、入院患者が支払う標準負担額を差し引いた額が支給されます |
訪問看護療養費 |
医師の承認のもとで訪問看護ステーション等から派遣された看護師に、療養上の世話や必要な補助を受けたときに支給されます |
特定療養費 |
高度な先進医療を受けたときは、厚生労働大臣の認める診療、投薬、入院料などの基礎部分について現物給付として支給されます |
療養費 |
国外で医療を受けたとき、やむを得ない事情で非保険医にかかったときや治療用装具代等は、保険者の承認を得て払い戻しされます |
高額療養費 |
窓口での自己負担金額が一定限度を超えたときに、申請により越えた部分が払い戻されます |
移送費 |
療養上の必要から医師の指示により入院(転院)させるとき、保険者の承認を得られれば払い戻しされます |
病気、ケガで休んだとき |
傷病手当金 |
療養のため継続して4日以上会社を休んで、賃金の支給を受けないとき、給与の約66%を最大1年6ヶ月支給されます |
出産したとき |
出産育児一時金 |
妊娠4ヶ月以上で出産したとき、1児に付き38万円が支給されます |
出産手当金 |
被保険者が出産のため会社を休んで賃金の支給を受けないとき、産前42日、産後56日の範囲内で給与の約66%が支給されます |
死亡したとき |
埋葬料 |
本人が死亡したときは、埋葬を行った家族に支払われ、家族が死亡したときは、本人に一律5万円が支給されます |
厚生年金保険とは
厚生年金保険は、会社に働いている人が年をとって働けなくなったとき、あるいは思わぬケガや病気のために一定の障害が残り、働く能力が失われたり、不幸にして亡くなった場合に、国民年金に上乗せして年金や一時金として支給して、本人及びその家族または遺族の生活の安定を図ることを目的として作られた公的年金です。
年金と聞くと、年を取ったときのものだけというイメージがあると思いますが、厚生年金には老齢以外にも支給されます。
例えば、交通事故などの不慮の事故で身体に障害が残ってしまった場合などには障害年金が、不幸にして亡くなってしまった場合には、残された遺族に遺族年金として支給されます。
社会保険の保険料について
社会保険の保険料については、被保険者の給与に対して下記の保険料率になっています。
※保険料率は平成29年9月現在のものです。また、健康保険の料率については、都道府県ごとに異なります。
健康保険(神奈川県) |
厚生年金保険 |
介護保険なし |
介護保険有 |
|
99.3/1000 |
115./1000 |
183/1000 |
上記の保険料率を会社と従業員(被保険者)でそれぞれ折半して国へ納付します。
また、事業主負担分には、児童手当の拠出金として、2.3/1000を別途納付することになります。
社会保険の手続きや管理は煩雑です
社会保険の加入手続は、事業所の管轄の年金事務所で行います。
しかし、社会保険に加入したらそれでおしまいという訳にはいきません。
加入後は従業員の入社や退職などの手続、また、お給料が大幅に変更された場合など、事業主が行わなければならない手続が頻繁に発生します。そして、毎年7月には新しい社会保険料の額を確定させる手続(算定基礎届といいます)が必ずあります。
そして手続については、平成20年10月より協会けんぽに変わったため、各種手続の届出先が年金事務所へ出さなければいけないものと協会けんぽに出さなければいけないものとに分かれるようになってしましましたので、届出先を間違えないようにしないといけません。
さらに、協会けんぽ(全国健康保険協会の各支部)は原則とし各都道府県にひとつしかないため、事業所が協会けんぽの近くにあるとは限りませんので、場合によっては届出も大変です。
もちろん郵送での手続も可能なものもありますが、書類に不備があったりした場合には、そのまま戻ってきてしまいまので、手続がどんどん遅れることになってしまいます。
また、社会保険料の仕組みや決め方については、かなり複雑ですので、きちんと正確に保険料を管理できている事業所は以外に少ないのが現状のようです。
社会保険料の管理がきちんとできていないと、例えば従業員の給与から控除する社会保険料を多く引いてしまったり、また逆に少なく引いてしまったり、はたまた給与から控除しなければならないのに引かなかったり、引かなくてもよいのに引いてしまったりということがあります。もちろん、年金事務所や協会けんぽがこれらのことをその都度教えてくれるということはありません。
このようなことであると、事業所が社会保険料を国に多く収めすぎてしまったり、また手続漏れなどのため、年金事務所から調査(※)を受けて保険料を少なく収めていたことが発覚した場合には、後から社会保険料を追加徴収されて、事業所としては痛い出費となることもあるのです。
また、社会保険の手続や保険料の管理がきちんとできていないと、従業員側からすれば「会社がするべきことをきちんとやってくれない…」などということになり、従業員の士気が低下し事業運営にも影響する場合もあるのです。
※年金事務所は、税務署の税務調査と同じように約3年〜4年毎に事業所がきちんと日々の手続や保険料の管理ができているか調査を行うことがあります。(これを社会保険総合調査といいます)また、はじめて社会保険に加入した事業所は、加入後約1年から2年の間に調査があることが多いです。
その結果、保険料を少なく保険料を納めていた場合には、追加して徴収されたり、本来社会保険に加入させなければならない従業員を加入させていなかった場合には、さかのぼって加入させられたりします。
なお、これらは最大2年間さかのぼって行われますので、場合によっては何百万、何千万単位で追加して保険料を支払うことになる場合もあるのです。
以上のことから、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の手続や保険料をきちんと適正に行うことができるだけで、会社のコストを節約することにもなり、さらに、従業員の士気の低下を防ぎ、また、無用な労使トラブルも防ぐことができるのです。
また、日々の業務が忙しい事業主の方にとっては、社会保険の手続など書類を作成し、行政に届出する手間やそれにかかる時間の浪費も馬鹿になりません。
ハチヤ事務所は社会保険(健康保険・厚生年金保険)の専門家です
当所は、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の専門家ですので、御社に代わって確実かつすばやく適正に手続をいたします。専門家であるからわかるちょっとした社会保険の節約方法や管理方法などもアドバイスさせていただくことができます。
電子申請により御社のご依頼にすばやく対応いたします
また、御社のご希望により当所は書類の届出を電子申請でも行っております。
電子申請は申請を行う前に取得しなければならない電子証明書(パソコン上の御社の実印みたいなものです)の取得や管理が難しく、そして実際の申請手続の煩雑さなどから一般の事業所では普及していないのが現状です。
しかし、当所が御社の労働社会保険の手続を電子申請により手続を代行する場合には、御社で電子証明書をお取りいただく必要はなく、当所の証明書だけですばやく行うことが可能です。
そして、一般的に各種手続を社会保険事務所やハローワーク等の窓口に持っていくのに比べて、電子申請は処理が早いため、例えば保険証の交付なども早くお渡しすることが可能です。当事務所は事業所様からご依頼いただいた手続に迅速に対応させていただくため、電子申請による手続を他の社会保険労務士事務所に比べて積極的にすすめております。
電子申請での手続の場合には、ご依頼をいただいたその日に手続を完了させることも可能で、現在ご依頼を頂いております事業所様からも好評です。
また、当事務所は電子申請を行うに伴いセキュリティー対策もしっかりしておりますので、ご安心ください。
まずはお気軽にお問合せください
社会保険の加入手続きはもちろん、普段の社会保険の手続、また御社の社会保険に関するご相談など、社会保険に関することは何なりとお気軽に安心してお任せください。
なお、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の諸手続を事業主の方に代わって手続できるのは、国家資格者である社会保険労務士だけです。