労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した呼び方です。労働保険は正社員、パート、アルバイトの区別なく従業員を雇った場合には、事業主の方が必ず加入しなければならない国の制度です。
また、労働保険は従業員に対して適用される制度ですが、当事務所へご委託をいただいた場合には、事業主の方も労災保険に加入できる特別加入という制度にもご加入いただけます。
特別加入は、中小零細事業所など事業主の方も従業員と同じように業務に従事される場合には、とても心強い制度です。
以下に労働保険について簡単に分かりやすくご説明いたします。
労災保険とは
労災保険とは、労働者が仕事中や通勤途中に、ケガをして負傷したり、病気にかかったり、またはこれらが原因で障害が残ってしまったり、さらに不幸にして亡くなってしまった場合に、被災した労働者や遺族に対して必要な給付が国から行われるものです。
労災保険は、正社員、パート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、会社に雇用されるすべての人に適用されます。例えば、1日だけアルバイトで働いてもらった人が、その日に仕事中にケガをしてしまった場合にも労災が適用されます。
労災保険の給付内容には、治療費はもちろん労災で仕事を休業した場合の休業補償、身体に一定の障害が残った場合の障害補償給付、亡くなった場合に遺族に対して支給される遺族補償給付などがあります。
給付される額等については、例えば治療費については原則として治療費全額が給付され、また休業した場合の休業補償については、休業4日目以降給与の約8割が支給されます。また、障害補償給付は障害の程度に応じて、一時金や年金として支給されます。
労災保険の保険料については、すべての従業員に支払う給与の総額に保険率を掛けたものが、保険料額です。保険率とは、お仕事の種類により1,000分の2.5から1,000分の79までの範囲で決められています。労災事故が発生する確立が高い業種ほど保険率が高く設定されており、例えば、製造業(食料品)であれば1,000分の7.5、サービス業であれば1,000分の4.5といった具合に決められています。
なお、労災保険料は全額事業主負担となり、従業員の負担分はありません。
また、労災の場合には原則として健康保険で受診することができませんので、労災保険を使って受診することになります。
雇用保険とは
従業員が失業した場合に、従業員の生活の安定を図るとともに、再就職を促進するために必要な給付を行う制度です。また、失業の予防や雇用構造の改善などを図るための事業も行っている国の制度です。昔は失業保険といわれていました。
雇用保険は原則として、会社に常勤で雇用される者は全員被保険者となります。
また、常勤より労働時間が短いパート、アルバイトなども下記の二つの要件に該当する人は、被保険者となります。
1.1週間の所定労働時間が20時間以上であること 2.31日以上引き続き雇用されることが見込まれること |
雇用保険の給付については、失業した人が給付を受ける失業給付、60歳以上65歳未満の従業員が、60歳のときと比べて給料が75%未満の給料に下がった場合に支給される高年齢雇用継続給付、従業員が出産後育児休業をするために会社を休業した場合に支給される育児休業給付、家族を介護するために休業した従業員に支払われる介護休業給付などがあります。
また、事業主に対しても、失業の予防と雇用の安定のためや福祉の増進など一定の要件を整えた事業主に助成金などの給付金を支給しています。
雇用保険の保険料については、雇用保険の対象となっている従業員の給料の総額に保険料率をかけたものが保険料額となります。また、保険料は事業主負担分と従業員負担分があり、従業員負担分は、通常給与から控除して支払います。
<一般の事業> |
賃金総額 × 1,000分の9 (1,000分の3) |
<農林・水産・酒造の事業> |
賃金総額 × 1,000分の11 (1,000分の4) |
<建設の事業> |
賃金総額 × 1,000分の12 (1,000分の4) |
※上記は平成29年4月1日以降現在 なお( )は被保険者負担分です
労働保険は原則としてセットで加入です
労働保険は原則として労災保険と雇用保険セットで加入することになります。
加入の手続きについては、事業所を管轄する労働基準監督署やハローワークで加入手続き及び保険料の申告を行います。
労災保険の特別加入とは
労災保険は従業員に対して適用される制度のため、中小企業等の中には事業主ではあるが、従業員と同じように業務に従事する方も多く、このような方が万一仕事中にケガなどされた場合には、労災保険は適用されません。
しかし、業務の実情や災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方に対して特別に任意に加入を認めているのが、この特別加入制度です。
ここでいう中小企業とは、下記の規模の事業所をいいます。
業 種 |
労働者数 |
金融業 保険業 不動産業 小売業 |
50人 |
卸売業 サービス業 |
100人 |
上記以外の業種 |
300人 |
事業主の方が特別加入に加入するには下記の要件を満たすことが必要です。
1.従業員の労働保険に加入していること 2.労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること |
このことから、事業主の方が特別加入をするためには、労働保険事務組合に委託することが必要で、事業主の方自ら労働保険の手続されている場合には、加入できないのです。
特別加入の保険料については、3,500円から20,000円までの13段階に分かれている給付基礎日額という日額に基づいて算定されます。給付基礎日額は事業主の方が任意で決めることができます。また、保険率は従業員の労災と同様の保険率で計算します。具体的な保険料の計算の仕方は下記のようになります。
※サービス業で給付基礎日額10,000円の場合の保険料(年額) 10,000円(給付基礎日額) × 365日 × 1,000分の4.5(保険率) = 16,425円 |
特別加入の給付については、原則として従業員の労災保険の給付内容と同じです。
給付の額について治療費については、全額給付されます。また、休業給付や障害補償給付などについては、給付基礎日額をもとに支給額が決まります。例えば、給付基礎日額10,000円の方の休業給付は、休業4日目以降1日に付き10,000円の8割の8,000円が支給されます。
労災保険の未加入に対するペナルティが強化されました!
上記でご説明しましたとおり常勤、パート、アルバイトにかかわらず、1人でも従業員を雇用している事業所は、労災保険の加入手続きを行わなければなりません。
万が一、労災保険に未加入の事業所で労災事故が起こってしまった場合には、被災した従業員に支給された治療費や休業補償などの給付額の一定割合が事業主に請求される費用徴収というペナルティが事業主に科されることになります。
そしてこの費用徴収制度が平成17年11月1日から今までよりも強化されました。
具体的には、下記のような取扱いがされます。
労災保険の加入手続きについて行政から指導等を受けていたにもかかわらず、手続を行わなかった期間中に労災が発生した場合 |
↓ |
事業主が故意に手続を行わないものと認定し、その労災に関して支給された保険給付額の全額を事業主から徴収 |
労災保険に適用される事業所となったときから1年を経過して、なお手続を行わない期間中に労災が発生した場合 |
↓ |
事業主が重大な過失により手続を行わないものと認定し、その労災に関して支給された保険給付額の40パーセントを事業主から徴収 |
また、費用徴収が行われた場合には、別途労働保険料も遡って(最大2年間)徴収されます。
つまり、従業員を雇っている事業所が労働保険に加入していないということは、事業所にとって、とてもリスクが高いことなのです。
労働保険は法律で決まっているからやむを得ず加入しなければならないものだから…というお考えではなく、御社で一生懸命働いてくれる従業員のもしものためのものであるとの認識をしていただき、現在労働保険に未加入の事業主の方は、ぜひ加入のご検討をしていただければと思います。
なお、労働保険には未加入ですが、民間の保険会社の労災保険だけに加入されている事業所もあるようです。しかし、たとえ民間の保険会社の労災保険に加入していても、労働保険には加入しなければならず、万が一未加入のうちに事故が起こってしまった場合には、上記の費用徴収は免れません。
労働保険の手続きは煩雑です
労働保険(労災保険、雇用保険)は加入手続きは、業種により加入手続きの仕方がそれぞれ異なり、例えば製造業と建設業では加入手続きの仕方が違います。また、加入手続きを一度済ませればそれで終わりではありません。
従業員が入社したり退職したり、実際に労災事故が起こった場合などには、労働基準監督署やハローワークで手続をしなければなりません。そして、その際の届出用紙も何十種類とあります。
また、さらに毎年6月〜7月には、労働保険料の申告手続きと保険料の納付手続があります。
これらの手続や書類の作成は、事業主の方にとっては専門的で複雑かつ難しいものです。そのため、適正に労働保険の事務や手続がなされなかった場合には、労働保険料を間違えて申告してしまったり、届出しなければならない手続がされなかったりと、会社に思わぬ負担や不利益なことが発生する場合もあります。
また、日々の業務が忙しい事業主の方にとっては、労働保険の手続など書類を作成し、行政に届出する手間やそれにかかる時間の浪費も馬鹿になりません。
ハチヤ事務所は労働保険の専門家です
当所は、労働保険(労災保険、雇用保険)の専門家ですので、御社に代わって確実かつすばやく手続をいたします。労働保険の加入手続きはもちろん、普段の労働保険の手続、また御社の労働保険に関するご相談など、労働保険に関することはすべて安心してお任せいただけます。
電子申請により御社のご依頼にすばやく対応いたします
また、当事務所は書類の届出を電子申請でも行っております。
電子申請は申請を行う前に取得しなければならない電子証明書(パソコン上の御社の実印みたいなものです)の取得や管理が難しく、そして実際の申請手続の煩雑さなどから一般の事業所では普及していないのが現状です。
しかし、ご希望により当所が御社の労働社会保険の手続を電子申請により手続を代行する場合には、御社で電子証明書をお取りいただく必要はなく、当所の証明書だけですばやく行うことが可能です。
また、一般的に各種手続を社会保険事務所やハローワーク等の窓口に持っていくのに比べて、電子申請は処理が早いためすばやい手続を行うことが可能です。当事務所は事業所様からご依頼いただいた手続に迅速に対応させていただくため、電子申請による手続を他の社会保険労務士事務所に比べて積極的にすすめております。
電子申請での手続の場合には、ご依頼をいただいたその日に手続を完了させることも可能で、現在ご依頼を頂いております事業所様からも大変好評です。
また、当事務所は電子申請を行うに伴いセキュリティー対策もしっかりしておりますので、ご安心ください。
まずはお気軽にお問合せください
労働保険(労災保険、雇用保険)に関することについて、また、事業主の方が加入できる労災保険の特別加入などについては、当事務所へお気軽にお問い合わせください。
なお、労働保険の諸手続を事業主の方に代わって手続できるのは、国家資格者である社会保険労務士だけです。